【確定版】2016年度秋学期試験はここから出題します!
2016年12月20日 00:50
1 明治憲法の特色
1889(明治22)年 大日本帝国憲法(通称「明治憲法」)が制定される。
【簡単な説明】
明治憲法は、神権的天皇制との妥協を図って制定した憲法である。従って、民主的要素と反民主的要素が微妙に混在した。
明治憲法の起草過程
伊藤博文:ウィーン大学のシュタインやベルリン大学のグナイストから教えを受けた上で、立憲君主制のプロイセン憲法を参考にして明治憲法は起草された。
明治憲法は、西欧諸国の政治思想の影響の下、国民の権利や議会制度を認めるなど一部民主的要素を取り入れていた。
明治憲法の特徴(1)
①欽定憲法
「現在及将来ノ臣民二対シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス」(憲法発布勅語)
②天皇主権
天皇=万世一系の統治権の総攬者=神聖不可侵の存在(現人神)
③統帥権独立
統帥大権(軍事)と統治大権(政治)の所持⇒軍隊は議会や内閣の制約を受けない
④衆議院貴族院対等
衆議院(民選)では制限選挙実施。貴族院(勅選)は皇族、華族、多額納税者。貴族院が衆議院を抑制する役割を果たす。
⑤臣民権利義務
天賦人権思想は見られない。生存権や自由権の保障の欠如。「日本臣民ハ法律ノ範囲内二於テ移住及移転ノ自由ヲ有ス」(第22条)
2 日本国憲法の制定
1945年8月14日 ポツダム宣言の受諾
=日本の無条件降伏
ポツダム宣言の主な内容
①戦後日本の平和主義の確立
②基本的人権の尊重
③国民主権の確立
ポツダム宣言への対応
①松本烝治国務大臣を主任とする委員会発足
②憲法改正草案(松本案)の作成
③同案は「天皇が統治権を総攬する」という原則に変更を加えないなど、保守的な色彩濃厚
④総司令部は全面拒否・同案消失
⑤最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥による「マッカーサー三原則」の提示
⑥総司令部独自の憲法草案起草
新憲法の制定まで
日本政府は総司令部案を大体そのまま内閣の憲法草案として採用=憲法改正草案要綱完成
1946年6月20日 同要綱を第90回帝国議会提出
約3ヵ月におよぶ審議
枢密院の諮詢⇒天皇の裁可
1946年11月3日 日本国憲法の公布
1947年5月3日 日本国憲法の施行
第三章 国民主権と象徴天皇
1 国民主権
日本国憲法は国民主権主義を最重要な基本原理として採用している。
“主権”概念の誕生
①「主権」の考案者=ジャン・ボーダン(フランス)
②主権は、絶対君主の支配権を根拠づける理論的概念として考案された。
③フランス人権宣言第3条「全ての主権の淵源は、本来国民に存する。」
④国民主権の原理は、君主主権に対抗して確立された概念である。
国民主権=人類普遍の原理
民主主義の発達とともに、国民主権は、「人類普遍の原理」と目されるようになる。
国民主権は、基本的人権を確立し、絶対君主を打倒した結果生まれた「闘争的概念」である。
日本国憲法の国民主権(イ)
①日本国憲法(以下省略)前文「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」
②第1条「天皇は、日本国の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」
日本国憲法の国民主権(ロ)
国民主権の「主権」:国家の意思を決定する①最高にして、②最終的な権限が国民に存する。
すなわち、①国民のみに主権が存し、②国家の意思決定は一体として国民に属していなければならない。三権は憲法の制約を受けるが、憲法を制定する権力(「憲法制定権力」)は、国民に存する。
2)国民主権の理念とその具体化
国民主権の採用=国政の最高の決定権が国民に帰属。国民が直接政治権力を掌握し、国政を運営しなくてもよい。
国民主権に立脚していれば、いかなる政治体制でも構わない。例えば、議院内閣制も、大統領制も、政治の主体としての国民の①自主性、②反抗性、③能動性が生かされていることが重要である。
日本国憲法の国民主権
日本の国民主権⇒国会中心の代表民主制
国民主権の建前からは、国民の全てが直接国政全般に参加することが望ましい。だが、国民の数が多くなれば、それは現実には不可能である。そこで、国民は代表者を選出し、代表者を通じて政治参加する代表民主制を採用することになった。
第43条第1項「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」
国会中心主義
[意味]
国会=国民の意思を直接代表する
第41条「国会は国権の最高機関」
[比較]
帝国議会=天皇の協賛機関
国会=国民の代表機関
日本の直接民主制的要素
①憲法改正権(第96条)
②国会議員選挙(第43条)
③最高裁判所裁判官国民審査(第79条)
④地方公共団体の首長や地方議会の議員の選挙(第93条)
⑤地方自治特別法の制定のために行われる住民投票(第95条)
象徴天皇
国民主権=現行憲法の三つの柱
日本国憲法は、明治憲法と同様に「第一章」で天皇制の存置を認める。つまり、日本人の中の特定の人物に「天皇」という特別な地位を与え、一般国民と区別する。
天皇の憲法的根拠は?
1)天皇の地位【第1条、第2条】
第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
明治憲法における天皇
①天皇は国の「元首」である。
②天皇は統治権の総攬者である。
③天皇は「神聖不可侵」とされた。
④天皇主権が当然と目された。
日本国憲法における天皇
①天皇は、日本国及び日本国民の「象徴」である。
②天皇の地位の根拠は、主権者としての国民の「総意」にある。
象徴としての天皇
「象徴」⇒一般的に言えば、「抽象的・無形的なもの」を表す「具体的・有形的なもの」を指す。例えば、鳩=平和の象徴、十字架=キリスト教の象徴など。
皇位継承
日本国憲法第2条は「皇位」を「世襲」とする。皇位継承者は「国会の議決した皇室典範」によって規定する。
皇室典範は、皇位の継承は、天皇が崩御したときに限られ、天皇の生存中の退位は認められない(第4条)。皇位は皇統に属する男系の男子によって継承される(第1条)。
天皇の国事行為
第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
日本国憲法第4条解説
「国政に関する権能」とは、国家の統治作用に関する実質的・主体的な諸機能。例えば、三権。
「国事に関する行為」とは、統治に関する実質的な権能ではない。儀礼的・形式的・名目的な権能。国事行為は自己の決定に基づいた行為ではない。内閣・首相・国会などによって決定された行為に儀礼的・形式的に参加する行為。
国事行為の内容(1)
第6条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
国事行為の内容(2)第7条
1憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2国会を召集すること。
3衆議院を解散すること。
4国会議員の総選挙の施行を公示すること。 以下省略
(3)国事行為の代行
天皇が自ら国事行為を行なうことができない場合⇒その権能を代行させるための制度がある。
①「国事行為の委任」(第4条第2項)
②「摂政」(第5条)
①国事行為の委任
天皇に精神もしくは身体の疾患または事故があるとき、摂政を置くほど重大な故障でない場合に、国事行為を皇室典範に定める摂政となる順位に当たる皇族に委任して、臨時に代行させる処置。
②摂政
「摂政」とは、天皇が、長期にわたって国事行為が行えない場合に、天皇に代わって置かれる法定代理機関である。この場合、皇族女子にも摂政資格が与えられる(皇室典範第17条)。
3 皇室財政【第8条、第88条】
皇室の財産と経費について、憲法は二つの規定を設けている。
①財政の章において、「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」(第88条)
②天皇の章において、「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない」(第8条)
皇室財政
皇室財産は、次の①と②から構成される。
①国有財産で皇室の用に供される皇室用財産
②皇室の私有財産
皇室経費は、皇室経済法によって、内廷費、宮廷費、皇族費の三つに区分し、予算に計上されている。
1)内廷費=「天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるもの」(皇経法第4条)。
2)宮廷費=「内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるもの」。宮内庁が経理する公金(皇室経済法第5条)。
3)皇族費=「皇族としての品位保持の資に充てるもの」「皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額により支出するもの」「皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、皇族がその身分を離れる際に一時金額により支出するもの」。(皇室経済法第6条)。
第四章 基本的人権
Ⅰ 基本的人権の原理
日本国憲法が最重要視するもの=基本的人権の保障
基本的人権=天賦の権利=国家成立以前から人間が生れながらに享有する自然権(前国家的な性格を持つ自然権)
Ⅰ 基本的人権の原理(続)
自然権は、「通常の法律よりも更に高次の憲法に明記する」ことにより、より確実に保障された。なぜなら、基本的人権とは、「人間が生まれながらにして持っている固有の権利」である。
18~19世紀:基本的人権は、国民主権の確立と同じく、近代国家生成期における市民革命によって形成された。
20世紀:自由権の他にも、社会権が導入される。基本的人権のカタログの中で「新しい人権」が主張された。
最近の状況:
人間生活の個別化と多様化が進む中で権利と権利との衝突の問題や権利と「公共の福祉」の調整の問題が生じている。
1 人権宣言の歴史
人権宣言の歴史を概観する。
1)人権思想の確立
1215年:マグナ・カルタ
1689年:権利章典
1776年:ヴァージニア権利章典(メイソン)
1776年:アメリカ独立宣言(ジェファーソン)
1789年:フランス人権宣言(ラファイエット)カッコ内は起草者名を意味する。
1)人権思想の確立
近代は、中世の封建制及び近世の絶対制に対して、人民の権利を要求し、市民の契約により国家を形成し、人権保障を確立しようとした。
基本的人権の思想的源流
①個人の尊厳の思想
②近代自然法の思想
特に、ジョン・ロックによれば、人権に先立って国家が存在するのではなく、国家は人権を保護・防衛するために存在する。
2)人権宣言の普及
ヴァージニア権利章典(1776年)
「全ての人は、生来平等に自由かつ独立しており、一定の生来の権利を有するものである。これらの権利は人民が社会(国家)を組織するに当たり、いかなる契約によってもその子孫からこれを奪うことはできない」(第1条)
フランス人権宣言(1789年)
「人は、自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する。社会的差別は共同の利益の上にのみ設けることができる」(第1条)
3)自由権から社会権へ
19世紀人権宣言=自由権を中心とする自由国家的人権宣言
20世紀人権宣言=社会権をも保障する社会国家的人権宣言
社会権=「20世紀型人権」
社会権保障の意義について
形式的平等主義⇒実質的平等主義
社会権(例えば、生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権など)を保障し、「社会国家」として国民の福祉の向上に努める。
*なお、こうした国家を「福祉国家」と呼ぶ場合もある。
4)人権宣言の国際化
20世紀の人権思想的傾向
人権保障を単に国内法のみならず、国際法的にも実現する=人権宣言の国際化
1948年 世界人権宣言
1966年 国際人権規約
1954年 難民の地位に関する条約
1981年 女子差別撤廃条約
1990年 児童の権利に関する条約
2 日本国憲法における人権保障
明治憲法「第二章 臣民権利義務」
人権=国家により“上から”与えられたもの= 「天皇の恩恵」。
人権の種類は少なく、しかも法律の範囲内においてのみ保障する「法律の留保」を伴う。つまり、立法権による侵害が予定されていた。
日本国憲法第10・11・97条
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第11条 国民は、全ての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
1)人権の享有(イ)
日本国憲法⇒生存権思想の採用
第25条 生存権
第26条 教育を受ける権利
第27条 勤労の権利
第28条 労働基本権
2)人権の主体
①人権⇒人種、性別、身分などに関係なく、人間である以上、当然に享有できる普遍的な権利
②基本的人権の主体⇒日本国民
③日本国民の要件⇒国籍法
国籍法の日本国民の要件
①出生による国籍の取得
②認知された子の国籍の取得
③帰化による国籍の取得(以下の要件参照)
・引き続き5年以上日本に住所を有する。
・20歳以上で本国法により行為能力を有する。
・素行が善良である。
(1)天皇・皇族の人権
天皇・皇族=日本国籍を有する日本国民
①憲法上特別な身分にある。②一般国民とは異なる特殊な身分関係・法律関係にある。③人権保障において一定の制限を受ける。
保障される:思想・良心の自由(第19条)、学問の自由(第23条)など。
保障されない:選挙権や被選挙権(第15条、第44条)など。信教の自由(第20条)、表現の自由(第21条)、移住移転・職業選択の自由(第22条)なども一定の制限を受ける。
(2)外国人の人権
通説・判例の立場:第11条があるにもかかわらず、外国人も日本領土内に在住する限り、わが国の法の適用を受ける。「属地主義」の採用⇔「属人主義」
原則:外国人にも基本的人権が保障される。なぜなら、基本的人権は人類普遍の原理であり、日本国憲法が国際協調主義に立つことを考慮すれば、人権は日本に在住する外国人にも適用される。
(3)未成年者の人権
①未成年者も、日本国民である限り、当然に人権を享有する。
②未成年者は、精神的、身体的、社会的にも未成熟であり、しかも判断能力や責任能力がまだ十分ではない。従って、未成年者は、保護の対象として考えられる。未成年者は、人格的に独立した成人に比べて人権が制約される。
③未成年者が制約される人権は、選挙権(第15条)、婚姻の自由(第24条)、職業選択の自由(第22条)などである。
(4)法人の人権
①人権保障は、自然人を対象とする。かつては法人には基本的人権の規定は適用されないとする見解が有力だった。
②現代社会では、法人の社会的存在と社会的活動の重要性が増大している。
③法人の活動は自然人の手によって運営され、その利益は自然人に帰属する。
(5)死者の人権
民法第3条「私権の享有は、出生に始まる。」従って、死亡と同時に、私権は終了する。
死体からの臓器移植:死者の生前の承認を必要とする立場(例えば、ドナーカード)は、法的根拠を当人の身体に対する自己決定権に求めて、その決定は死後も効力を有する。
*刑法第190条(死体損壊・遺棄の処罰)は、死者を法益(法により保護される生活上の利益)の主体として認めるのではなく、死者に対する崇敬と社会的風俗としての宗教的感情を保護するものである。
Ⅱ 基本的人権の限界
日本国憲法
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。
基本権の根本的な問題点
①憲法は、一方で基本的人権の不可侵性を強調すると同時に、他方で「公共の福祉」を定めている。このことは、基本的人権も絶対無制限のものではないものと理解すべきなのか。
②憲法の基本的人権は、国及び地方公共団体の公権力によって個人の人権が侵害されないとするものである。では、私人間の人権侵害にも憲法上の人権保障の効力が及ぶのか。
③特定の個人が国家との特別権力関係に置かれることにより、人権の制約がどの程度許されるのか。
1 基本的人権と公共の福祉
憲法が保障する基本的人権は、国家権力でさえも侵すことのできない永久の権利として保障されている。
それでは、基本的人権は何の制約も受けない絶対無制限のものであろうか。(A)
あるいは、基本的人権も一定の制約に服するものなのであろうか。(B)
AかBかをめぐり、多くの議論がなされてきた。
AかBかの議論の詳細(イ)
A説:憲法第11条と第97条は、憲法の保障する基本的人権は、「侵すことのできない永久の権利」であるとして、人権の不可侵性を強調する。
B説:憲法第12条と第13条は、「国民は、これを濫用してはならない」のであり、常に公共の福祉のために利用する責任を負うとし、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とすると規定する。
AかBかの議論の詳細(ロ)
更に、移住・移転・職業選択の自由(第22条)と財産権の保障(第29条第2項)についても、日本国憲法は、「公共の福祉」に反しないことをその条件としている。
以上から、基本的人権は、「公共の福祉」によって制約することが許されるのかどうかが問題となる。また、この場合、「公共の福祉」という概念の具体的な意味内容も検討の必要がある。
[参照条文] 第22・29条
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
初期の学説の「公共の福祉」論
初期の学説の主張
憲法が定める基本的人権は、全て「公共の福祉」によって制約される。従って、「公共の福祉」を理由に、法律は基本的人権に対する制限を定めることができる。
当時の最高裁判例(昭和30年代後半頃まで)
「公共の福祉」による制約論が重視され、その具体的内容を明らかにすることなく、表現の自由や学問の自由などを制限する法律の規定が合憲と判断された。
最大判昭和32.3.13チャタレー裁判
人間はたった一人で生活するものではない。従って、常に他人の権利や利益との調整が問題となる。基本的人権にも、その権利自体に内在する制約・限界がある。
憲法にいう「公共の福祉」とは、権利と権利との衝突を防ぎ、憲法が保障する人権が、全ての国民に等しく、合理的に確保されるための原理であり、それは人権と人権との調和を保つ「公共的利益」を意味する。
昭和40年代からの公共の福祉論
1)「公共の福祉」の意味内容は、きわめて抽象的であり、曖昧である。その具体的内容については、しばしば意見の対立が見られる。
2)人権の制約が合憲であるかどうかの判断基準は、具体的・個別的に論じられるべきである。
3)そこで、抽象的な公共の福祉論から、「比較衡量」、「合理性の基準」、「二重の基準」といった具体的制約基準を論じるようになる。
1)比較衡量
比較衡量とは、「基本的人権を制限することによって得られる利益・価値(①)と基本的人権を制限しないことによって維持される利益・価値(②)とを比較衡量して、前者の利益・価値が高い(①>②)と判断される場合には、それによって人権を制限することができる」とする。
最判昭和44.11.26【博多駅テレビフィルム提出命令事件】より
最高裁昭和44年11月26日大法廷
最高裁は、「報道の自由は、憲法21条の保障にある取材の自由といっても無制約ではない。報道機関の取材フィルムに対する提出命令が許容されるか否かは、①対象犯罪の性質、軽重および②取材内容の証拠としての価値、③公正な刑事裁判を実現するための必要性の程度と、これによって④取材の自由が妨げられる程度を比較衡量して決めるべきである。この件の場合、フィルムは裁判に重要な価値・必要性がある一方、報道機関がこうむる不利益は将来の取材の自由が妨げられる恐れがあるという程度にとどまるため、受忍されなければならない」 とし、抗告棄却。
2)合理性の基準
合理性の基準とは、基本的人権を制限する法律がある場合、ただ「公共の福祉」で制限されると考えるのではなく、一般的に法的規制の目的が必要性かつ合理性を有するのか、その手段についても合理性を有するのかについて、具体的・個別的に審査する。
最判昭和50.4.30【薬事法事件】より