第5回授業用資料
2015年10月18日 16:38
以下は、第5回目の授業用資料になります。必ず目を通しておいてください。
1)人権思想の確立
1215年 マグナ・カルタ
1689年 権利章典
1776年 ヴァージニア権利章典(メイソン起草)
1776年 アメリカ独立宣言(ジェファーソン起草)
1789年 フランス人権宣言(ラファイエット起草)
なお、これらの起草文へのジョン・ロックの『統治二論』(1690年)の影響は重要である。
近代は、中世の封建制及び近世の絶対制に対して、人民の権利を要求し、市民の契約により国家を形成し、人権保障を確立しようとした。
基本的人権の思想的源流
①個人の尊厳の思想
②近代自然法の思想
特に、ロックによれば、人権に先立って国家が存在するのではなく、国家は人権を保護・防衛するために存在する。
2)人権思想の普及
ヴァージニア権利章典(1776年)
「全ての人は、生来平等に自由かつ独立しており、一定の生来の権利を有するものである。これらの権利は人民が社会(国家)を組織するに当たり、いかなる契約によってもその子孫からこれを奪うことはできない」(第1条)
フランス人権宣言(1789年)
「人は、自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する。社会的差別は共同の利益の上にのみ設けることができる」(第1条)
市民革命の世紀(=18世紀)の人権宣言は、19世紀から20世紀前半にかけて、ヨーロッパ諸国に大きな影響を与えた。
各国の憲法において、国民主権、人権保障、権力分立、議会制及び国民の参政権などの原理を含む近代立憲主義の原則が採用され制定されていった。
3)自由権から社会権へ
人権宣言の歴史を回顧してみよう。
人権の内容面で大きな変化が見られることを確認しよう!
19世紀の人権宣言=自由権を中心とする自由国家的人権宣言
20世紀の人権宣言=社会権をも保障する社会国家的人権宣言
それ故、社会権=「20世紀型人権」
1919年のワイマール憲法では、
①「経済生活の秩序は、すべての者に人間に値する生活を保障することを目的とする正義の原則に適合しなければならない」(第151条)=社会的経済的弱者の保護及び国家の積極的活動の義務
②「所有権は義務を伴う。その行使は、同時に公共の福祉に役立つべきである」(第153条)=財産権はもはや不可侵の権利ではない。社会的な拘束を負う。
社会権の保障は、形式的な平等主義から 実質的な平等主義への移行を意味する。
社会権(生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権など)の保障を取り入れ、「社会国家」として国民の福祉の向上に努める。なお、こうした国家を「福祉国家」と呼ぶ場合もある。両者は名称の違いがあるものの、その目指すところはほぼ同じである。今日の社会福祉及び社会保障の直接の起源と目される。
4)人権宣言の国際化
20世紀の人権思想的傾向
人権保障を単に国内法のみならず、国際法的にも実現する=人権宣言の国際化
1945年 国連憲章
1948年 世界人権宣言
1966年 国際人権規約
1954年 難民の地位に関する条約
1981年 女子差別撤廃条約
1990年 児童の権利に関する条約
児童の権利に関する条約⇒ヤヌシュ・コルチャック
1878年7月22日~1942年8月?
ユダヤ系ポーランド人。
ナチス・ドイツの統治下のワルシャワにあるゲットーでユダヤ人孤児のために孤児院を運営する。子どもの権利と子どもたちの完全な平等のために活動した先駆者である。
日本国憲法の人権保障
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第11条 国民は、全ての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
日本国憲法第11条解釈
①人権は天から国民に与えられたものである。
②法律をもってしても人権を侵すことができない。
日本国憲法第97条解釈
人権の永久不可侵性が繰り返し明言される。なお、第97条が「第十章 最高法規」に置かれているのは、基本的人権の保障の重要性を示す。
憲法上配慮を必要とする人権について
1)天皇・皇族の人権
天皇・皇族=日本国籍を有する日本国民=天賦人権的な基本権の保障
天皇は、憲法上特別な身分にあり、一般国民とは異なる特殊な身分関係または法律関係にある。従って天皇は、人権保障において一定の制限を受ける。
思想・良心の自由(第19条)、学問の自由(第23条)などは保障される。
選挙権や被選挙権(第15条、第44条)などの参政権は認められない。信教の自由(第20条)、表現の自由(第21条)、移住移転・職業選択の自由(第22条)なども一定の制限を受ける。
2)外国人の人権
通説・判例の立場
日本国憲法第11条の規定があるにもかかわらず、外国人も、日本領土内に在住する限り、わが国の法の適用を受ける。「属地主義」が採用される。⇔「属人主義」
従って、原則、外国人にも基本的人権が保障される。なぜなら、基本的人権は人類普遍の原理であり、日本国憲法が国際協調主義に立つことを考慮すれば、人権の主体は、日本に在住する外国人にも適用されるものと解される。
最大判昭和53年10月4日【マクリーン事件】
事件の概要:一年間の在留期間を得た後、その更新を申請した原告に対して、法務大臣は在日中の反戦運動参加等を理由にこれを拒否した。
①「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としているもの(参政権など)を除きわが国に在住する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」
②外国人の政治活動の自由についても「わが国の政治的意思決定、またはその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」
憲法は、必ずしも、外国人を完全に日本国民と平等に取り扱うことを要求しない。
従って、外国人に対する法律上の制限は、それが「合理的な範囲」である限り認められる。
しかし、憲法の国際協調主義の立場から、権利の性質上適用可能な範囲において、日本国民と同じように、外国人も平等に取り扱うことが必然的に求められ、それが憲法の趣旨に副うものと考えられる。
3)未成年者の人権
①未成年者も、日本国民である限り、当然に人権を享有する。
②未成年者は、精神的、身体的、社会的にも未成熟であり、しかも判断能力や責任能力がまだ十分ではない。従って、未成年者は、保護の対象として考えられる。未成年者は、人格的に独立した成人に比べて人権が制約される。
③未成年者が制約される人権は、選挙権(第15条)、婚姻の自由(第24条)、職業選択の自由(第22条)などである。
4)法人の人権
①人権保障は、自然人を対象とする。かつては法人には基本的人権の規定は適用されないとする見解が有力だった。
②だが、現代社会では、法人の社会的存在と社会的活動の重要性が増大している。
③しかも、法人の活動は自然人の手によって運営され、その利益は自然人に帰属する。昨今では法人に権利の主体として自由や権利を保障する必要性が生じた。
法人に認められる人権:法の下の平等(第14条)、財産権(第29条)、営業の自由・移転移住の自由(第22条)、裁判を受ける権利(第32条)、国家賠償請求権(第17条)や法定手続きの保障(第31条)など。
法人に認められない人権:生存権(第25条)、内心の自由(第19条)、拷問や残虐な刑の禁止(第36条)など。
5)死者の人権
民法第3条「私権の享有は、出生に始まる。」死亡と同時に、私権は終了する。
死体からの臓器移植:死者の生前の承認を必要とする立場(例えば、ドナーカード)は、法的根拠を当人の身体に対する自己決定権に求めて、その決定は死後も効力を有する。
*刑法第190条は死体損壊・遺棄を処罰する。これは死者を法益(法により保護される生活上の利益)の主体として認めるのではなく、死者に対する崇敬と社会的風俗としての宗教的感情を保護するものである。